研究概要 |
平成5年度において,歯肉炎の進行予測に役立つ可能性のある菌叢の特徴として抽出されてきたEikenella corrodensの有無により歯肉炎を有する被験者の群分けを行い,平成6年度ならびに今年度はこれら被験者における臨床状態の経過観察を行った。 歯肉炎を有しかつE.corrodensが存在しない群(C1)7名,E.corrodensが存在する群(C2)11名に対し,被験部位である1歯の歯肉炎症指数(GI),ポケットの深さ(PD)および出血の有無(BI)を六カ月毎に2年間測定した。さらに,同部位よりペ-パ-ポイントを用いて歯肉縁下プラークを採取し,培養細菌のPrevotella intermediaとE.corrodens,位相差顕微鏡によるmotilerodsとspirochetesの形態別菌数の計測を行った。 その結果,C1群とC2群を比較すると,1年半後の時点まで2群間にはGI,PDおよびBIの値に有意差はなく,臨床状態に差異は認められなかった。各群の病態変化を求めるためにベースライン時との比較ならびに6カ月毎の臨床指数の比較検討を行ったところ,C1群では1年後の時点までは各指数の値に有意差は認められなかったが,1年半後の時点ではGI,PDおよびBIのいずれの指数もベースライン時,1年後に比べ有意に減少していた。C2群ではGIとBIは1年後の時点までは有意差は認められなかったが,PDのみ1年後の時点でベースライン,6カ月後に比べ有意に減少していた。1年半後の時点ではC1群と同様にいずれの指数も有意に減少していた。C1群とC2群には有意な臨床状態の差異はなく,2群とも病態変化としては改善傾向が認められた。被験者として歯学部学生を用いたため,本研究を通して口腔衛生意識が変化した可能性があり,1年半後の時点においてアンケート調査を行った。現在,1月〜2月に行った2年後の結果の集計および多角的な分析を行っている。
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