研究概要 |
平成5年度において,以前の研究で歯肉炎の進行予測に役立つ可能性のある菌叢の大きな特徴として抽出されてきたEilenella corrodensの有無により対象者30名のうち歯肉炎を有する被験者18名の群分けを行ない,平成6年度を含む2年間に亘り臨床状態の経過観察を行った。 歯肉炎を有しかつE.corrodensが存在しない群(C1群)7名,E.corrodensが存在する群(C2群)11名に対し,被験部位1歯の歯肉炎症指数(GI),ポケットの深さ(PD)および出血の有無(BI)を6ヶ月毎に測定した。同時に,被験部位よりペ-パ-ポイントを用いて歯肉縁下プラークを採取し,Prevotella intermedia,E.corrodens,motile rodsおよびspirochetesの計測を行ない,以下の結果を得た。 C1群とC2群の間の臨床状態の比較により, 1.2年間において両群の臨床状態には有意差は認められず,両群とも1年を経過した後から有意な改善が認められた。 2.アンケート調査より,実験開始時と1年半後では歯磨き回数や時間が増加しており,本実験が被験者である歯学部学生の口腔衛生への関心を高める動機づけとなった可能性が示された。 また,対象者30名における歯肉縁下細菌と臨床状態変化との分析により, 1.重回帰分析結果では,motile rodsの比率がGI,PDの増加へ,P.intermediaの比率がGI,PDの減少へ大きく寄与しており,ベースラインから6ヶ月間の変化よりも1年間のGI,PDの変化量と有意な関係を示した。 2.ロジスティック解析の結果では,ベースライン時にmotile rodsが存在した場合における1年後のPDの増加の危険性は存在しなかった場合に比べ106.4倍高く,有意にハイリスク因子であることが示された。
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