研究概要 |
9家族35名より採取したミュータンスレンサ球菌,計700株についてその相同性を鑑別したところ,一人当たりが所有する株の種類は1株から3株であり,このうち2株を有するものが35名中17名と最多数を占めた。17名の子供のうち母親の持つ株と同じパターンを示す株を持つものは14名いた。このうち母親と同じ株のみ持つものは3名,母親と同じ株と父親と同じ株のみをあわせ持つものは5名,母親も父親も持たない株を持つものは7名いた。残りの3名については父親の持つ株と同じ株を保有していた。これらのことより,子供の保有する菌株は家族,特に母親から伝播する可能性が高いことが示唆された。 不溶性グルカン合成量は,一家族を除いて,家族内伝播したと考えられる株の値が家族内伝播していない株の1.10倍から2.47倍と高かった。また,不溶性グルカン量の全グルカン量に占める割合も,伝播していない株が18.4〜88.7%であるのに対して,79.1〜90.5%という高い数値を示す傾向にあった。さらに,菌のぬれやすさの指標となる接触角は,全菌株の値が10〜20°であるのに対して,家族内伝播した12株は全て14°以下と小さい値を示した。安定期の菌液のpHについては全菌株が5.472〜6.040の間にあり,特に相関性は観られなかった。 以上の結果より,同菌の伝播および定着には不溶性グルカン合成能や接触角などの付着因子が深く関わっていることが示唆された。
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