歯科矯正臨床において、舌癖による開咬を防ぐことは重要なことである。その方法の一つに、舌訓練があげられる。しかし、その効果を高めるための基礎資料となる、一般集団における発音や嚥下にともなう舌運動については、いまだ明確にわかってはいない。 そこで、一般集団に対して、舌運動と顎顔面形態との関連性について検討を行い、舌運動の個体差について臨床的指針を得るため、以下の研究を行った。 始めに、ダイナミックパラトグラフィーの記録方法を決定するために、予備実験(23例)を行い、記録方法を以下のように決定した。 嚥下に伴う舌運動については、嚥下を行った際に舌が口蓋に触れ始めてから離れるまでの時間を5回記録し、最大、最小値を除く3回の平均を代表値とした。 2.発音については、母音(いあえおう)と子音を含む(さしゃたら)を発音させ舌が口蓋に触れる状態を記録した。 上記の記録方法に従って記録し、嚥下に伴う舌運動時間の個体差と経日変動を調べるための分散分析(10例)と、顎顔面形態とどのような関連性があるかを調べるための相関分析(32例)を行った。 その結果、嚥下時の舌運動時間に有意な個体差や、舌運動時間と顎顔面形態(数項目)間に有意な相関が認められたがまだ例数が少なくはっきりとしたことが言えないので、今後も例数を増やし検討していく予定である。 また、発音に伴う舌運動に関してはパラトグラフ上で視覚的に個体差は認められるが、有意か否かの判定は行っていないので、その客観的な判定方法の選択も今後の課題である。
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