不正咬合や顎関節症の病因のひとつに早期接触による顎の異常運動があげられ、その診断には従来から咬合紙、ワックスバイト、調節性咬合器あるいはマイオモニターや咬合音などを応用する方法も報告されている。しかし、これらの方法では、早期接触の存在の確認や、早期接触歯の同定にとどまり、顎運動に与える影響の解析あるいは早期接触解消後の筋機能の変化を知ることはできない。 本研究では、歯根膜の圧迫刺激によって誘発される咀嚼筋の興奮を咀嚼筋筋電図法を応用して検出し、早期接触の咀嚼筋に与える影響を解明するとともに、早期接触を取り除いた後の機能変化、とくに筋機能の変化について検討するため以下の実験をおこなった。 実験には成犬2頭を用い、下顎犬歯遠心面に接着性レジンで人為的に早期接触を付与した。早期接触による歯根膜反射が咀嚼筋に与える影響をみるため咬筋と側頭筋から筋電図を採録しながら、ロードセルを用い上顎犬歯に圧刺激を与えた。圧刺激は、歯冠軸に対して頬舌方向と垂直方向としロードセルから得られる歪曲線と筋電図を同時記録した。記録は早期接触付与前、付与後、さらに、早期接触除去後について行った。 その結果、早期接触付与直後より頬舌方向からの圧刺激に対して、早期接触除去後、3〜4日以後は認められなくなっていた。 以上のことから、人為的早期接触の影響による歯根膜の反射の形成ならびに消失は比較的早期に行われるものと考えられた。
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