研究概要 |
(研究目的) 乳歯と永久歯の交換現象を解明する手がかりとして,歯帯孔,歯帯管を中心に一連の研究を続けている.そこで今回,歯帯孔の大きさ(面積),歯帯管内残存上皮の微細構造について検討を加えた. (材料と方法) 1.歯帯孔の大きさ(面積) 講座所蔵のカニクイザルのさらした頭蓋骨をヘルマンの歯年齢に準じて分類した.ヘルマンの歯年齢IC,IIA,IIC,IIIA期から各10体を選び計40体とし,上下顎6前歯部左右側の歯帯孔の大きさを計測した.計測は座標読み取り装置を使用し,歯帯孔の大きさは面積計測システムにより計算した. 2.歯帯管内残存上皮の微細構造 出生後3か月のカニクイザル1頭を用い,電子顕微鏡で観察した.歯胚側1/3のものと,歯肉側1/3のものについて観察した. (結論) 1.歯帯孔の大きさ(面積) (1)歯帯孔の大きさは,IC期に最も小さいのは下顎犬歯(平均0.36mm^2)で最も大きいのは上顎中切歯(平均0.58mm^2)であった.IIIA期で最も小さいのは上顎犬歯(平均0.58mm^2)で,最も大きいのは上顎中切歯(平均1.67mm^2)であった.(2)歯帯孔の大きさの加齢変化の少ないのは上顎犬歯で,加齢変化の大きいのは上顎中切歯であった. 2.歯帯管内残存上皮の微細構造 (1)残存上皮の構造はマラッセ残存上皮と類似している.(2)残存上皮は基底膜によって隔てられ,デスモゾームで結合し,細胞膜にマイクロビライ,ヘミデスモゾームが認められる.(3)細胞内にはトノフィラメント,核,ミトコンドリア,祖面小胞体,ゴルジ装置,顆粒などがみられる.(4)退化傾向は歯胚側より歯肉側に多くみられ,モゾームやトノフィラメントは退化の影響を受けにくい. 以上のことから,残存上皮は歯帯管の開存維持にかかわりを持ち,代生歯の萌出を確保するものと考えられる.
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