成長発育中に生じる不正咬合、咀嚼障害を診断し、適切な治療法、治療時期を決定するためには、頭蓋顎顔面骨の成長にともなった変化を可能な限り正確に予測することが不可欠であります。このため、我々は、成長発育変化の解析方法として、1931年Broadbentが頭部の評価法として導入して以来、数多くのセファロ分析法を用いてきております。そして、それらのほとんどは、角度分析や線(距離)分析を主体とし、解剖学的な基準点を設けて相対的位置を評価するものであります。したがって、これらの分析方法は上下顎の前後的な位置関係を把握しやすいといる利点を有し、矯正医どうしのコミュニケーションツールとしても定着しております。しかし、その反面、顎顔面構成骨それぞれの骨形態を単独で評価することは不可能であり、さらに、各計測点間における骨体表面の変化を正確に表わしているとは言い難いものでもあります。また、重ね合せや変換の際に不動点を設定してしまう。という問題点を抱えております。さらに、我々のX線CTを用いた下顎骨骨形態と骨密度、筋機能に関する研究から、顎骨の成長にともなった形態的/質的な変化では、筋牽引の力、方向およびその荷重領域である歯列、咬合と密接な関連性を有していることが判明してきております。そこで、本年度は、経年的に撮影されたセファログラムから下後骨輪郭線の変化を成長速度ベクトルとして表示する方法を考案し、いくつかの症例に応用、それぞれの下顎骨体の成長の差異を抽出可能であるか検討しました。 1.セファログラム上で下顎骨輪郭線をトレースし、スキャナーにて輪郭を構成する各点の座標値データを抽出する。 2.成長前後の座標値データに対して三次スプライン関数により補間をおこなう。 3.成長前後の対応点を探索するとともに、隣接する成長速度ベクトルの差を補正する評価関数を決定する。 4.評価関数から成長前後の座標系を変換し相対位置を修正する。成長速度を決定する。 その結果、成長発育の場所が特定可能となり、今後、症例数を増すとともに我々が行っている三次元的な骨密度変化の分析結果と合わせて総合的な形態分析・成長予測法として臨床応用するつもりであります。
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