研究概要 |
本方法の根底には、正常の成長変化であれば骨折や病的肥大などに見られるようなCatastorophe的な変化は起きないであろうという仮定がある。つまり、筋突起が3年後に関節頭にはならないであろう、という仮説が根底に存在するが、より正確に外形線の変化を捉えるのであれば、軟骨組織である関節頭などにおける成長ベクトル算出法には重みづけをおこなう必要も認められる。しかし、現段階でセファログラムを用いた臨床上の手法という制限のもとに骨体内部の成長量を描出することは不可能である。したがって、数学的な論理に基づいた方法という点で本研究における評価関数の設定は多分に妥当なものであると考えられる。また、本研究では、主に成長変化の評価法ということを目標としたが、口蓋裂症例の解析としても示したように、個体間における形態の差異を抽出する方法としても有用であると考えられる。加えて、本年度の実績として、高度な計算をコンピュータの処理によって比較的簡単におこなえるようにしたことは今後の普及,臨床応用へ寄与するものでもある。 本年度の解析から、正常な(先天的異常のない)被験者においては以下の点が明らかとなった。 1)各年齢間において成長の場は変動している。 2)上記の特性として形態特異性がある。 3)添加・吸収の逆転相が時間的,空間的に存在している可能性がある。 4)歯槽部は他の部分には見られない特異的変化を示すことがある。 また、口蓋裂症例の解析から 1)従来の研究では、咬合状態が顎骨成長へ及ぼす影響を過大評価していた可能性がある。 2)下顎骨の成長は遺伝に支配されている可能性が高い。 3)特に母親の遺伝的影響が大きい可能性がある。 などがあげれれる。
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