研究概要 |
ヒト抜去乳歯および永久歯より歯根膜組織を採取し,斎藤・川瀬らの方法に準じてexplant法によりヒト乳歯歯根膜線維芽細胞(HPLF-Y)と永久歯歯根膜線維芽細胞(HPLF)を樹立した。HPLF-YおよびHPLFに対し,Flexercell vacuum systemを用いて機械的伸展力を加え,細胞層のDNA量,alkaline Phosphatase(ALP)活性を測定することにより,細胞の増殖と分化に対する影響について検討した。さらに細胞の分化に影響を及ぼすと考えられるretinoic acid(RA)および1,25dihydroxy vitamin D3(3)の機械的外力への応答に対する影響についての検索を行った。培養5日目より,変形率5%で10秒間伸展させ,10秒間弛緩させる負荷を24時間加えた場合,HPDFでは細胞増殖は促進されたが,HPLF-Yにおいてはcontrol群と有意な差は認められなかった。また,同様の負荷によりHPLF,HPLF-Yの両者においてALP活性の上昇が認められたが,その上昇効果はHPLFにおいて,より著明であった。また,変形率10%の負荷を加えた場合,5%の負荷を与えた場合と同様にHPLFにおいてのみ増殖の促進が認められた。5%の機械的外力によりHPLFではgrowth phaseにおいてALP活性の上昇が認められたが,confluent phaseにおいては外力の負荷による差は認められなかった。HPLF-Yではgrowth phaseにおいてRAとD3を同時に添加した場合,またconfluent phaseにおいてはD3単独,あるいはRAとD3の同時添加の場合にのみ機械的外力の負荷によるALP活性の上昇が認められた。以上の結果から,HPLF-YとHPLFではの機械的外力に対する応答に差が認められ,両細胞の歯周組織改造に果たす役割の相違が示唆された。
|