研究概要 |
平成5年度の研究成果として以下の所見が得られた。 【.encircled1.】非脱灰切片での電子顕微鏡による観察から,歯の移動1〜2日目では,コラーゲン線維束および類骨層のコラーゲン細線維への石灰化沈着物の結晶は微細でしかも散在的に観察されたのみであった。これが5日目になるとコラーゲン線維束上での石灰化沈着物が集合し突出部領域を形成し14日目に観察された類骨層の石灰化に対しより先行する姿が次第に明らかになってきた。今後は1〜3日目でのコラーゲン線維束の表面の詳細な観察,1日目ですでに存在する骨芽細胞内における蛋白合成に関する検索が必要である。 【.encircled2.】生体反応としての血清中のBGPの計測については、controlとして12週齢のラットについて3.20±0.35ng/mlと安定した値が得られた。また,歯の移動3,5日に低値を示し(5日群:2.08±0.34ng/ml,対照群に対しP<0.01で有意差),14,21日上昇傾向を示した(14日群:2.70±0.31ng/ml,対照群に対しP<0.05,5日目群に対しP<0.05で有意差)。これらの結果は,歯の移動1,3日で歯根膜の圧迫それに伴う変性組織の出現等でdamageを受けた組織が次第に活性化され,9,14,21日目で旺盛な骨形成が確認された申請者らの過去の組織学的所見と併せて考えると,骨芽細胞から分泌されるBGPと血液中のBGPが歯の移動時の骨改造に密接に関与することを示唆するものと思われる。 【.encircled3.】脱灰組織におけるBGPの検索については牽引側の骨芽細胞と歯槽骨に反応が認められたが,その局在性が顕著でないため現在検討中である。
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