研究概要 |
実験的にラットの歯を移動した際の牽引側歯根膜における初期変化について組織学的観察を行い、さらにその全身的影響について検索するため血清生化学的に測定し、歯の移動の際の骨の改造機転について検討を加えた。(1)成熟ラット(12週齢)の歯の移動の初期変化について非脱灰切片を制作し、電子顕微鏡により観察し以下の結果を得た。1〜2日目で、コラーゲン線維束上および類骨層のコラーゲン細線維上に石灰化沈着物の小さな結晶が散在して観察された。3日目では、コラーゲン線維束上および類骨層のコラーゲン細線維上の石灰化沈着物はその数も大きさも増加していた。5日目に至ると、類骨層のコラーゲン細線維上の石灰化沈着物は集合体を形成した。さらにコラーゲン線維束上ではその集合体はより大きな集塊となり突出部領域を形成し、新生骨の形成において類骨層の石灰化より先行することが明かとなった。(2)血清BGPの測定については、最初の実験系では、入手が容易なことから抗ヒトBGP血清(ヤマサキット)を使用し、歯の移動1,3,5,7,14,21日行った群および対照群(12,13,14,15週齢)について計測し以下の結果を得た。歯の移動3,5日では対照群(12,13週齢)と比較し減少し有意差が認められた。7,14,21日目では増加し、対照群(13,14,15週齢)との間に有意差は認められなかった。このようなラットにおける血清BGPの変動は、歯の移動3,5日で歯根膜の圧迫側に出現する変性組織に代表される組織のダメ-ジが7,14,21日で回復し、牽引側では14,21日で新生骨の形成が急速に進行する過程を反映しているものと考えられる。さらに、ラット本来の抗シロネズミBGPウサギ血清の入手が可能となったため(ヤマサより提供)、これを使用し現在、追試実験中である。(3)歯根膜および骨におけるBGPの局在については、脱灰組織を用いラットに対するBGP抗体を使用し検索中である。
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