研究概要 |
実験的にラットの歯を移動した際に組織学的観察、および血清生化学的検索を行い、歯の移動の際の骨改造機転について検討を加えた。さらに、これらの臨床応用として成人矯正患者の治療の初期段階の骨改造機転を診査するため血清オステオカルシンを含む血清生化学的検索を行った。(1)成熟ラット(12週齢)の歯の移動の3、7、9日目のBGPの局在について観察し、牽引側の歯槽骨表面にBGP活性が認められた。(2)ラットの歯の移動時の血清BGPの変動について最初の実験系では、入手が容易な抗ヒトBGP血清(ヤマサ・キット)を使用していた。今回はラット本来の抗シロネズミBGPウサギ血清を使用し、歯の移動1,3,5,7,21日行った群およびそれに対応する対照群について計測し、以下の結果を得た。歯の移動3日では、対照群と比較し有意に低い値を示した。5,7,21日では対照群との間に有意差は認められなかったが、むしろ対照群より高い値を示す傾向がみられた。血清GBP値以外では、血清アルカリホスファターゼが3,5,7日で対照群より有意に低い値を示した。このようなラットにおける血清BGPの変動は、歯の移動3,5日で歯根膜の圧迫側に出現する変性組織に代表される組織のダメ-ジが7,14,21日で回復し、牽引側では14,21日で新生骨の形成が急速に進行する過程を反映しているものと考えられる。(3)実際の臨床での血清BGPの変動について、治療前、抜歯後、犬歯の移動後に測定を行い以下の結果を得た。抜歯後に血清BGP値は大きい値を示し、犬歯移動後では減少し初診時のレヴェルまで低下した。このような血清BGP値の増加は抜歯窩修復過程における骨芽細胞の増殖を反映しているものと考えられた。さらに、矯正力による歯の移動と血清BGP値を含めた全身的影響との関係について明らかにするため、上下鍔前歯の移動による抜歯空隙閉鎖後、動的治療終了後まで、現在測定し検討中である。
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