顎顔面頭蓋組織には咬合や咀嚼機能の変化に対する調節機構が存在すると考えられており、この調節機構により顎骨の変化を生じさせ、骨格性不正咬合を発現、増悪させることが考えられる。 本研究では上顎大臼歯を挺出させることにより咬合および咀嚼機能を変化させ、それに伴う顎顔面頭蓋組織の調節機構について検討した。 計画当初、実験動物にはミニブタGを用いる予定であったが、動物入手の確実性、実験に対する適合性などによりユカタンマイクロピッグに変更した。平成5年度には、動物保定台、頭部固定装置を考案、作製し、正常対照群の頭部X線規格写真の撮影を行い、その精度の高さについても充分であることを確認した。また光学顕微鏡的観察については、当初蝶形後頭軟骨結合や鋤骨、顎関節および咀嚼筋群について行う予定であったが、限られた動物数や標本採取時の手技等を考慮して、最も変化を明瞭にみることが可能な顎関節部とし、生後15週齢時と生後33週齢時の標本を採取した。平成6年度には、正常対照群の脱灰標本を作製すると供に実験群についても実験を行った。生後15週齢時より大臼歯部に咬合挙上板を装着し、大臼歯の挺出を行ったところ開咬状態あるいは下顎骨の前方偏位を呈したのを口腔内にて確認した。生後33週齢時に頭部X線規格写真の撮影および脱灰標本の作製を行った。頭部X線規格写真における比較検討では正常対照群と実験群では前頭蓋底と後頭蓋底とのなす角度や下顎角部の角度に僅かながら差異がみられた。個体によって開咬を呈する場合と、下顎前方偏位を呈する場合とに分れたが、その原因については特定することはできなかった。また頭蓋骨や上顎骨にはほとんど差異はみられなかった。脱灰標本では顎関節部で関節頭軟骨層の厚さに差異がみられた。
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