研究概要 |
小児歯科臨床において,歯牙の外傷はしばしば経験されるものである。特に、幼若永久歯の外傷においては,歯髄の狭窄,石灰化,などを起こすものもあり,その後,全歯髄腔を閉塞するまで続くこともある。またこのような歯髄腔狭窄は,歯内療法を困難にすることも考えられる。これらに興味をもって海外、国内の研究、文献を検索したが、詳細に検討したものはほとんどなかった。またそれらを、経日的に観察したものは皆無であった。そこで我々は根未完期のラットを用いて外傷を加え,その歯髄の変化,特に歯髄内の石灰化がどのように生じるのか、それらの経日的変化についても病理組織学的に検索した。 その結果、術後1日の多くの症例で象牙質面から象牙芽細胞の剥離や象牙芽細胞の配列不正などがみられた。このようなものは主に冠部歯髄の天蓋部や髄床底部に多くみられた。術後3日目には剥離部の象牙芽細胞は配列不正、変性が明瞭となり、剥離により生じた間隙には液体の貯留と赤血球などが混在していた。術後7日目ではそれらの空隙部は消失し、細胞封入や空隙を伴う不規則象牙質の形成がみられた。術後14日、30日にはさらに不規則象牙質の形成が歯冠部の所々で強くなり、術後60日ではさらに厚くなり歯髄腔が全体的に狭窄されていくことが明らかになった。
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