ドクササコ(Clitocybe acromelalga)の酸性アミノ酸画分をイオン交換樹脂(Dowex 1、Dowex 50W)、HPLC、セルロースTLCで分離、精製することにより3種の新規アミノ酸を単離した。これらは、各種スペクトルデータの解析からグルタミン酸と他のアミノ酸が同一窒素を介して結合している、いわゆるオパイン類と推定されたので、対応するアミノ酸とα-ケト酸を還元的に縮合させる方法で化学合成し、絶対配置を含めたそれぞれの構造を決定した。担子菌からオパイン類が単離された例は少ない。本菌からはグルタミン酸の強力なアゴニストで強い神経興奮作用をもつアクロメリン酸A、Bが単離されていたが、われわれは、その類縁体3種(アクロメリン酸C、D、E)とキスカル酸サブタイプの選択的競合的遮断薬であり、また、アクロメリン酸類の芳香環部分の生合成前駆体と考えられているスチゾロビン酸とスチゾロビニン酸、および、神経毒として知られているβ-シアノアラニンとそのγ-グルタミルペプチドなど神経系に作用する多種類の化合物を単離した。本菌による中毒が極めて重篤で複雑な症状を呈するのは、このように神経系に作用する多種類の化合物の総合的な作用によるものと推定されるが、今回単離されたオパイン類も分子中にグルタミン酸構造をもつことから、グルタミン酸レセプターに対して何らかの作用をもち、毒性発現に関与している可能性もあり、今後、この点について検討する予定である。
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