研究概要 |
標的基質を特異的、定量的に標識するために共役ジエン構造に着目し、高感度蛍光性ジエノフィル(DMEQ-TAD)の合成に成功している。本研究は標的とする微量基質のより高感度検出、高選択的認識が期待される新しいジエノフィルの合成を行うこと、更に、蛍光性DMEQ-TADを用いて共役ジエン基を含む生体活性物質の定量分析への応用を目的とする。本年度は、新しい高感度ジエノフィルの合成及びDMEQ-TADを用いた応用研究に関して検討した。 1)ジエノフィルの合成:高感度な過酸化水素並びに過シュウ酸エステル化学発光検出に適用できるジエノフィルを合成した。化学発光性アクリジニウム塩構造を含むジエノフィルは不安定で用時調製する必要がある。現在、ビタミンDの定量的標識化およびHPLC分析に関する基礎的条件を検討している。 2)DMEQ-TADを用いた応用研究:血中の25-OHD_3および24,25-(0H)_2D_3の蛍光アッセイ法を確立した。更に、活性型1,25-(OH)_2D_3について検討しているが、分析結果は半定量的であり、現在精査している。 本蛍光アッセイの臨床への応用として、抗癌剤(シスプラチン)投与による化学療法患者のビタミンD代謝物に及ぼす影響について検討した。臨床パラメーターとして重要な25-OHD_3および24,25-(OH)_2D_3の正確な血中濃度測定に蛍光定量法が有効に利用された。 3)DMEQ-TADとジエン化合物との反応性:DMEQ-TADとビタミンDおよびビタミンAとの付加反応機構に関して検討した。ビタミンDとの付加反応では二種の6位のエピマーが生じるが、面選択性はA環上1位の水酸基及び反応溶媒に依存することを明らかにした。また、付加体の立体化学をCDスペクトルより決定し得ることを見いだした。 一方、共役ペンタエン構造を含むレチノイン酸およびその幾何異性体との反応では、いずれも高い位置選択性を示し7、10-モノ付加体を生じたが、9-シス異性体の場合は2分子のDMEQ-TADが付加し、唯一ビス付加体を生成した。このDMEQ-TADの反応性を利用しレチノイン酸の蛍光定量法を開発していく予定である。
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