研究概要 |
1.不斉アシル化で生成した光学的に純粋な二級アリルアルコール体のシス選択的なヨードラクトン化で得られたγ-プチロラクトン体は、新規なブテノライドキラル合成素子と見做すことができ,抗腫瘍生抗生物質である(-)-methylenolactocinの形式合成に成功した。 2.新規ブテノライドキラル合成素子の有用性をさらに展開するためにタンデム型反応をおこない,地衣植物成分である(+)-nephrosteranic acidおよび(+)-roccellaric acidの全合成に成功した。 3.これまでに開発したγ-ブチロラクトン型キラル合成素子を単なるラクトン系の生物活性物質の合成に限定することなく、キラルな5炭素ユニットと見做し機能性の向上を目指した。先ず最初に害虫キクイムシから分泌される集合フェロモンであるexo-brevicomineの両鏡像異性体の形式合成に成功した。 4.1993年にアフリカ象牙海岸のヤシの害虫であるアフリカヤシゾウムシの雄の分泌する集合フェロモン-3-メチル-4-オクタノールおよび3-メチル-4-ノナノールをヨードラクトン(5炭素ユニット)から炭素鎖を延伸後ブテノライドを経由してキラル合成に成功した。 5.1994年にカミキリムシから三種類の雄の性フェロモンが単離されたので、立体選択的に生成した2種類のγ-ブチロラクトン(5炭素ユニット)から短工程で(2R、3R)-2、3-ヘキサンジオール、(2R、3S)-2、3-ヘキサンジオールの合成に成功し、現在もう一種類の(2R)-2-ヒロドキシ-3-ヘキサノンの合成を検討中である。 以上今年度は新規ブテノライドキラル合成素子を開発し数種の生物活性物質の合成に応用することができた。さらに5炭素構築剤として機能して昆虫フェロモンの合成にも適用可能となった。
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