2-(N-シアノイミノ)チアゾリジン誘導体(1)は多様な官能基を有するため様々な反応が期待され、既にいくつかの位置および官能基選択的な反応を見いだしてきた.1は3位置換基(Y)の種類、あるいは用いる試薬の種類によりC(2)-S、C(2)-N(3)、C(2)=N、N(3)-Y結合などが選択的に開裂することが判明している.本年度は、これまでなかったニトリル部のみでの選択的な反応を検討した.1a(Y=alkyl)の酸あるいはアルカリによる加水分解反応では低収率でアミド(2)が得られるのみであった.ところがギ酸中室温でHg(OAc)2を用いて反応を行なうと高収率で2が得られた.これはアシロキシマーキュレーションの際に硫黄と親和性の高い水銀が1位硫黄原子と配位することによりニトリルが活性化されたものと思われる.1aはグリニャール試薬やアルキルリチウムとは反応しないことから水銀の反応系への寄与は興味が持たれる.次いでMe3O・BF4によるメチル化反応を検討した.1aのMe^+との反応部位は硫黄、及び3個の窒素原子が考えられるが、主としてニトリル窒素と反応することが明かとなった.ニトリリウムイオン(3)は加水分解によりメチルウレア誘導体(4)を生成し、マロネートアニオンとの反応ではチアゾリジニリデンマロネート(5)を与え、1aとは全く異なる反応性を示すことが判明した.尚、補助金はすべて試薬、ガラス器具、及びクロマト単体等消耗品に使用した.
|