研究概要 |
酸素原子によって安定化されたカチオン反応種を用いる新手法の開発を目指して、Beckmann開裂中間体を利用する反応と、ジオキセニウムカチオンを利用する反応について、研究計画に従い行った。 Beckmann開裂中間体の高次利用を目指した反応として、我々が見出した基礎反応の立体化学への応用について検討し、シクロアルカノンオキシム-1,2-アセトニドの開裂反応により、環上に固定されたカチオン中間体を生成させ、立体選択的な炭素種導入反応に成功した。更に、本法を用いて松喰虫の集合フェロモンである(±)-endo-brevicominおよび幼若フェロモン合成の鍵中間体の立体選択的合成に成功した。また、開裂中間体を光学活性アセタールとして捕捉し、ついで求核剤をジアステレオ選択的に導入することにも成功し、環状の光学不活性なオキシム類から光学活性な鎖状のω-シアノアルコール類を得るという新規な不斉合成反応の開発にも成功した。本法は、α-(R)-lipoic酸の形式合成に利用できた。 一方、種々のトリオール類とオルトエステル類とを塩化メチレン中、酸条件下に反応させると、ジオキセニウムカチオン中間体を経て、種々の多置換テトラヒドロフランおよびテトラヒドロピラン類がone-potで高収率で得られることを明らかにした。更に、天然に存在する糖由来の光学活性多価アルコールを用いて検討し、これらの高極性ポリオール類は、塩化メチレンには溶解しないが、塩化メチレン/メタノールの混合溶媒を用いて反応を行うことにより、容易に収率良く環状エーテルを得ることに成功した。本反応は、操作が簡便で、水酸基を保護することなく、様々な環状エーテルを得ることができる有用な方法である。本法を用いて、強い腫瘍細胞抑制作用を有するアセトゲニン類の一種である、ロリニアスタチン1のテトラヒドロフラン環部分の合成に成功した。
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