今年度はつぎの2項目について研究を行なった。 (1)DNAフィンガープリント法の薬用植物の種鑑別や系統解析への応用 リボゾームDNAをプローブとするRFLP分析法によって、ヅボイシア属植物の種同定および種間雑種の同定が極めて容易に行なえることを明らかにした。つぎに、この方法をわが国に自生し、地理的変異を示すいくつかの薬用植物の系統関係の解析に適用した。まず、その地下部の成分に関して北方型と南方型に区分されるハマボウフウではリボゾームDNAの塩基配列に関する多型は全く認められず、これらは遺伝的に極めて近縁の集団であることを示した。一方、ミシマサイコでは地理系統によって明瞭な多型が認められ、北九州・山口地方に分布する集団はたの集団とは区別される一つの分類群を形成していることが明らかになった。以上の結果は、この方法が薬用植物の種鑑別や系統解析に非常に有用な手段であることを証明している。 (2)DNAフィンガープリント法の生薬鑑別への応用 上記の成果を踏まえて、生薬から調製したDNAへの応用を試みた。生薬から調製したDNAは、乾燥過程での加水分解に起因すると思われる断片化を受けており、新鮮植物由来のDNAに適用したのと同じ方法をそのまま適用することは困難であった。そこで、DNAの小領域を増幅するPCR法を応用してリボゾームDNAのスペーサー領域の増幅を試みたところ、これが可能であることが明らかになった。 来年度は、このPCRによる増幅と増幅された領域の配列飲比較を組み合わせることを基礎とした生薬鑑別法を検討して行く予定である。
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