研究概要 |
前年度において、薬用人参毛状根を用いた生薬『センソ』の強心活性成分であるレジブフォゲニンの変換反応では、4種の新変換物が得られ、薬用人参毛状根は、ステロイド骨格に対して1βおよび5β位に立体選択的に水酸基を導入すると共に、3位水酸基に対してのみ配糖化反応を行うことが明かになっている。今回は、モノテルペン類に対して強い水酸化および配糖化能を有するツキヌキユ-カリを用いてレジブフォゲニンの変換反応を試みた。その結果、今回の実験条件では、ツキヌキユ-カリでは配糖化反応はほとんど進行せず5β位にのみ立体選択的に水酸基が導入されたmarinobufaginが選択的に生成した。 生体触媒を利用した物質生産研究の一環として、Agrobacterium rhizogenesにより形質転換して得られた黄耆毛状根によるサポニン類(astragaloside)の生産研究を行った。種々の培養条件下、毛状根の成長もよく、サポニン含量の高いA.meC-2株をB5培地にて大量培養し、これを用いてサポニン成分の構造研究を行った。その結果、agroastragalosideI,II,III,IVと命名する4種の新規トリテルペン配糖体と8種のastragaloside類を単離した。今回構造解析に用いたA.meC-2株と生薬黄耆より得られる配糖体画分は、TLCおよびHPLCにおいて同様なパターンを示していた。この事から、黄耆毛状根と生薬黄耆の薬理学的同等性が明らかになれば、黄耆毛状根は生薬黄耆の代用品として用い得ると考えられる。 エステル加水分解酵素を利用したアシル化アントシアニンの合成に関しては、acceptorとしてcyanin、donnerとしてchlorogenic acid,sinapoylglucose、enzymeとしてはtannase,chlorogenic acid esteraseを用いて種々アシル化反応を試みたがいずれの条件においても、アシル化アントシアニンを得ることが出来なかった。
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