研究概要 |
インドネシア産薬用植物Pasak Bumi(Eurycoma longifolia)の活性成分の検索については、ほぼ満足の結果が得られるまで研究することができたので、今年度はアルコール抽出物で細胞毒性活性を確認している南米産ツヅラフジ科植物Abuta(ブラジル名)の基原植物Abuta concolorとCissampelos pareiraについて、その活性成分の検索を中心に研究を行なった。その結果、両植物より新規物質を含む抗腫瘍活性化合物として、トロポロイソキノリンアルカロイドであるpareirubrine A,B,isoimerubrine,grandirubrineを単離、種々のスペクトル分析によりその構造を明かにすることができた。これら、トロポロイソキノリンアルカロイド類は、天然には稀であり、その生理活性についてはいまだ未知であったので、新規な抗腫瘍活性作用機序が期待された。そこで、さらにこれら化合物の誘導体を作成し、その抗腫瘍活性を検討した。また、トロポロイソキノリンアルカロイド類似体であるアザフルオランセンアルカロイド類norrufescine,norimeruteinも、活性成分として単離、同定することができた。 活性成分として単離された化合物及び誘導体の白血病性マウスP388培養細胞に対する活性を比較検討したところ、トロポロン環の10位にカルボニル基をもった化合物は、11位にカルボニル基をもった化合物よりも活性が強かった。また、トロポロイソキノリンアルカロイド類の方が、アザフルオランセンアルカロイド類よりも活性が強かったことより、トロポロン環が活性に重要な役割を演じていると考えている。 また、平成7年度に向けて、ニシキギ科Maytenus属植物について予試験を行ない、トリテルペン類、セスキテルペンピリジンアルカロイド類などの成分の存在を推測している。
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