研究概要 |
胆汁酸生合成の最終ステップである3α,7α,12α-trihydroxy-5β-cholestanoic acid(THCA)のβ-酸化では、肝ペルオキシソームにおける24、25位脱水素反応が、イブプロフェンに代表される2-アリルプロピオン酸系抗炎症薬の生体内異性化との関連から興味が持たれ、立体化学を含めたその機構解明が望まれている。そこで、負イオン検出ガスクロマトグラフィー(GC)/マススペクトロメトリー(MS)と安定同位元素標識体を用いるトレーサー法とを組み合わせ、Δ^<24>-THCAへの変換における水素脱離の立体化学に検討を加えた。 まず、Δ^<24>-THCAを原料として、N_2D_2によるシス付加反応を利用し、(24R,25R)-および(24S,25S)-THCAを製した。一部をペンタフルオロベンジルエステル-ジメチルエチルシリルエーテルに誘導し、負イオン検出GC/MSにて標識純度を測定した結果、2個導入されているものが71%、1個導入されているものが21%、非標識体が8%であった。 引き続き、^2H標識体各2nmolをそれぞれ対応する^<18>O標識THCAと1:1に混合後、ラット肝軽ミトコンドリア画分とインキュベートし、生成するΔ^<24>-THCAの^2H保持率をGC/セレクテッドイオンモニタリングにて測定した。その結果、24位の^2Hは25R体で5%、25S体で92%保持されており、いずれもproRの水素が脱離され、(24E)-Δ^<24>-THCAへと変換されることが判明した。このことは、25S体では脂肪酸の場合と同様anti-eliminationで、25S体ではsyn-eliminationで脱水素反応の進行することを示しており、25位立体異性体間で脱水素機構の異なることを示唆しており興味深い。
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