大腸菌には、強力な突然変異、致死作用を有するアルキル化剤によるDNA損傷の主生成物の一つ3-メチルアデニンを除去する2種類のDNA修復酵素、3-メチルアデニンDNAグリコシラーゼIとIIが存在するが、両酵素は、分子量、基質特異性、熱安定性、適応応答の点で異なっている。本研究では、X線結晶構造解析法でこれらの3次元構造を決定し、両酵素のアルキル化DNA塩基の認識機構、酵素反応機構を原子レベルで解明するとともに、両酵素の基質特異性、熱安定性の差異を3次元構造レベルで解明することを目的とし、本年度は以下の研究成果を得た。 <3-メチルアデニンDNAグリコシラーゼII> X線構造解析に適した結晶を得、2.0A分解能のX線回折データを精度良く測定した。立体構造既知の関連蛋白質がない場合、重原子同型置換法で構造解析を進めるため、重原子同型結晶の探索を行なったところ、水銀、白金、金、イリジュウム化合物が、構造解析に有効であることが判明した。それぞれの誘導体結晶のX線回折データを測定し、多重同型置換法を用いて解析、2.8A分解能の電子密度図作成に成功した。電子密度図から、本蛋白質は5本のβ鎖からなるβ-シートと約10本のα-ヘリックスで構成される新しいα+β構造をとることが明らかとなった。 <3-メチルアデニンDNAグリコシラーゼI> 本蛋白質を大腸菌中で大量産生させ、純度良く精製し、X線解析に適した結晶を作成するため結晶化条件を種々検討したところ、いくつかの条件で結晶を得たが、X線回析実験を行なうには現在のところまだ小さい。
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