平成5年度は細胞内皮系によるリポソームの取込機構を支配する要因について検討した(文献1)。リポソームの変動要因として投与量とサイズを選択した。in vivo実験より、リポソームの取込クリアランスの飽和性は、ミカエリス-メンテンの速度過程とは異なり血中濃度時間曲線下面積(AUC)に依存して減少することを示した。この飽和過程を記述する数学的モデルを構築することが可能となり(文献2)、満腹モデルと名付けた。速度論解析の結果、肝臓への取込過程には高クリアランス低キャパシティーと低クリアランス高キャパシティーの少なくとも二種類の過程が関与していることが示された。この飽和性を規定している要因がオプソニン側にあるのか肝臓側にあるのかを識別するために肝還流実験系を確立し検討した結果、中投与量でまず肝臓の取込クリアランスが飽和しはじめ、高投与量になると血中のオプソニンの枯渇と肝臓の取込クリアランスの低下の両方が生じることが明らかとなった(文献3)。次に、このリポソームの肝臓への取込機構、特にオプソニン機構の解明について検討を行なった(文献4)。その結果、HEPCを基剤とするリポソームは血清中の補体系を活性化し、補体成分がオプソニンとして作用していることが明らかとなった。さらに、このオプソナイズの効果はリポソームのサイズに依存し、0・4um以上のリポソームで顕著であることが明らかとなった。そこで、リポソームのサイズの認識を行なっているのがオプソニンなのか肝臓なのかを識別することを試みた。その結果、サイズの小さいリポソームは補体系を活性化せず、オプソニンである補体がリポソームのサイズを識別している可能性が示唆された。また、マンノース表面修飾リポソームの肝取込機構についても検討した結果、HEPCリポソームと同様に補体レセプターを介して取込まれていることが判明した(文献5)。これらの情報に基づいて、リポソームの細胞への取込機構と細胞内運命がどのように関連しているかについて、平成6年度以降に検討を行なう予定である。
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