平成7年度は、リポソームの細胞内への取込過程と細胞内動態がどのような関係があるかについて検討した。in vivoでの実験では、取込量の時間的変化を補正するために、^<125>I-albと^3H-CHEとでダブルラベルを行い、^3H-CHEに対するインタクトな^<125>I-albの比をとることにより細胞内分解過程の指標とした。リポソームのマクロファージへの取込過程は粒子径によって特異的経路と非特異的経路に振り分けられることから、まず、粒子径を変えることにより細胞内分解過程がどのように変化するかを検討した。その結果、特異的経路を介しても非特異的経路を介しても、細胞内での分解過程は共通で、速い分解に約8割が遅い分解に約2割が振り分けられることが明らかとなった。そこで、リポソームの投与量を変化させると、速い分解過程が投与量の増加とともに減少した。この分解過程に見られるリポソームの投与量の影響を説明するモデルとして分解過程のヘテロジェネイティを仮定した「振分モデル」と輸送過程のヘテロジェネイティを仮定した「渋滞モデル」を想定し、これらの識別を試みた。in vivo実験の結果をこれらのモデルで解析すると、いずれのモデルでも良く説明することができた。次に、単離した腹腔マクロファージを用いて、ライソゾームでの分解過程の前段階である酸性コンパートメントへの移行過程に投与量がどのように影響するかを検討した。細胞内pHの測定にはHPTSをマーカーとしてリポソームへ封入した。このマーカーはpH-sensitiveな蛍光色素で、環境のpHに依存して蛍光スペクトルが変化することが知られている。その結果、高投与量になるとリポソームは細胞内に取り込まれても速やかな酸性化を受けていないことが明らかとなった。このことは「渋滞モデル」を支持しており、細胞内輸送過程にもヘテロジェネイティが存在することが示唆された。
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