本研究は細網内皮系(RES)によるリポソームの取込様式とその機構の解明、さらにリポソームの細胞内運命が取込過程によりどのように支配されているかを明らかにすることを目的とした。肝臓によるリポソームの取込過程の特徴として投与量による飽和が知られている。我々はこの飽和過程に着目して速度論的解析を行ない、肝臓による取込クリアランスはミカエリスーメンテン型の飽和様式に従うのではなく、取込量に依存して減少するということを示し、「満腹モデル」を提唱した。次に、肝潅流システムでリポソームの取込機構について検討したところ、リポソームが補体レセプターを介してマクロファージにファゴサイトーシスで取込まれていることを示した。さらに、リポソームの細胞内への取込過程と細胞内動態がどのような関係にあるかを検討した。in vivoでの実験では、^3H-cholesterylhexadecylether (^3H-CHE)に対するインタクトな^<125>I-albuminの比をとることにより細胞内分解過程の指標とした。その結果、細胞内での分解過程は速い分解に約8割、遅い分解に約2割が振分けられることが明らかとなった。単離した腹腔マクロファージを用いて酸性コンパートメントへの移行過程に投与量がどのように影響するかを検討した。その結果、高投与量になるとリポソームは細胞内に取込まれても、すみやかな酸性化を受けていないことがわかった。このことは、2種類の分解コンパートメントを仮定する「振分モデル」で説明することは難かしく輸送過程のヘテロジェネイティを仮定する「渋滞モデル」を示唆した。以上、マクロファージへの取込過程と細胞内運命との関係について定量的評価と機構的解明を行ない、リポソームを用いて薬物送達システムを構築するうえで有用な知見を得ることができた。今後はこれらの成果をふまえて、細胞内動態制御に基づいた新しい薬物送達システムの構築を目指し、さらなる努力を続けてゆきたい。
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