グリセロール骨格の1位の位置はパルミチン酸かステアリン酸で、2位の位置は炭素鎖が5の^<14>Cで放射ラベルされたホスファチジルコリン(C_5-PC)、ホスファチジルエタノールアミン(C_5-PE)、ホロファチジルセリン(C_5-PS)、ホスファチジン酸(C_5-PA)の4種の放射ラベルリン脂質プローブを合成した。これらのプローブを用いて赤血球におけるリン脂質トランスロケーションを測定した結果、従来のスピンラベルリン脂質プローブを用いたものと同様なアミノリン脂質特異的なトランスロケーションが高感度かつ正確に測定でき、これらのプローブの有効性が明らかになった。 赤血球のアミノリン脂質トランスロケーションに対するX線照射の影響を調べた結果、50Gyの照射によりコントロールに比べてホスファチジルセリンの外側層から内側層へのトランスロケーションの初期速度が少し遅くなるが平衡値は変わらないことがわかった。このとき、溶血やマロンジアルデヒド増加はほとんど生じていなかった。 上記C_5-PC、C_5-PE、C_5-PSの三種のプローブを用いて、シビレエイ電気器官から調製したシナプトソーム形質膜のリン脂質トランスロケーションを測定した。その結果、ATP依存性でホスファチジルセリンのみに特異的な輸送体が存在することを明らかにした。この輸送体はリン脂質特異性の点で赤血球のアミノリン脂質トランスロカ-ゼとは異なったものである。 同様に、シビレエイ電気器官から調製したシナプス小胞膜のリン脂質トランスロケーションを測定した。この時、シナプス小胞膜と牛血清アルブミンと速やかに分離する手段としてスピンカラム法を確立して適用した。シナプス小胞膜にはリン脂質特異性がなくATP依存性もない輸送体(フリッパーゼ)活性が存在することを明らかにした。
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