研究概要 |
前年度に引き続き,過シュウ酸エステル化学発光検出フローインジェクション法を用いて血小板活性化因子(PAF)やホスファチジルコリン等のコリン含有リン脂質を定量するための検討を行った。本年度はPAFおよび種々のリン脂質の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分離定量を中心に検討した。 1. コリン含有リン脂質(ホスファチジルコリン,PC;リゾホスファチジルコリンLPC;PAF)とコリンを含まないリン脂質(ホスファチジルエタノールアミン,PE;ホスファチジルセリン,PS;ホスファチジルイノシトール,PI)を用いてHPLC分離を検討した。カラム;DAISOPAK-SP-120-5-APS,移動相;CH3CN/MeOH/10mM NH4H2PO4(pH5.8)=61.6/26.4/12(v/v/v,%)を用いた。 2.HPLC分離後の各リン脂質の内,コリン含有リン脂質を分取し,減圧乾固後,残さに0.1%Triton X-100 水溶液500μLを加えて溶解し試料とした。PC,PAFおよびLPCの検量線はいずれも8-160 pmol/injection の間で良好な直線関係を示した(r>0.996)。検出下限はそれぞれ1.6(PC),1.7(PAF)および2.9(LPC)pmol(S/N=2)であった。 3.健常人血清中の総コリン含量を定量した。PC:SPM:LPC=70:20:10で作成した検量線より求めた濃度は,102-168mg/dLであった。これらの結果と,市販のキットでの測定値との相関はr=0.962と良好であった。 4.健常人血清中の各コリン含有リン脂質を定量した結果,健常人の成分比はPC80%,SPM15%,LPC5%であった。この結果は,既報のものと良く一致した。PAFは本法の感度下ではいずれの血清からも検出できなかった。 以上,PAFおよびコリン含有リン脂質の高感度定量法を確定し,生体試料に適用することができた。本法は簡便で高感度であり,コリン含有リン脂質の研究に有用であると考える。
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