1.前年度の成果に基づき、銅電極ならびにその酸化処理による糖酸化活性能の変化に関して詳細に検討した。その結果、(1):十分に研磨した銅電極は、糖酸化活性能を有しない、(2):電解により酸化を行うと、糖酸化活性能の著しい向上が観測されるが、表面が粗となり、フロー法の電極としては不適である、(3):1度電解酸化処理を施した銅電極は、多少の研磨ではその糖酸化活性能を失わない、さらに(4):(3)の銅電極を100℃で空気酸化すると、光沢のある酸化層が形成され、電解酸化処理電極と同等の糖酸化活性を発現することを見いだした。 2.上記(1)ならびに(3)の結果より、電解酸化により、銅表面上に亀裂が生じ、そこに酸化第2銅の微結晶が析出し、このミクロ構造は、ある程度電極内部にまで発達しており多少の研磨では除去出来ないと考えた。これらの実験結果ならびに提案は、従来の研磨銅電極の糖酸化活性能に関する矛盾を明確に説明するものである。 3.1-(4)の方法で作成した電極をHPLC法に適用した結果、グルコースに対して100フェムトモルオーダーまでの検出限界を達成した。これは、糖の直接的検出法に関する報告を見る限り最高感度である。また、1ヶ月の長期連続使用に対しても、大きな感度の低下が認められないことがわかった。 4.長期間使用後の電極は、1-(4)に準じて比較的簡単な研磨と空気酸化処理を施せば、容易に再生出来ることを明らかにした。この場合、電極の安定化に要する期間も従来の1/10以下になる長所もあることを見いだした。 5.今後の問題点として、(1)酸化銅による糖酸化触媒反応の素反応過程の解明、(2)酸化銅電極表面のミクロ構造のキャラクタリゼーション、(3)オリゴ糖に対する高感度検出への改良、(4)アミノ酸等妨害物共存下での選択的検出への改良等が挙げられる。
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