研究概要 |
近年、種々の先天性肝胆道疾患(胆道閉鎖症、脳腱性黄色腫症(CTX),Zellweger症、Allagille症、Reye症候群等)が見出され、これら疾患の早期における診断法ならびに治療法の確立が緊急の課題となっている。胆汁酸は肝臓において生合成されるので、肝機能の診断指標として古くより注目されてきた。しかし、申請者らは胎児-新生児期の体液中から1beta-および6alpha-水酸化胆汁酸を見出し、健常成人には認められず、組成は成人と大きく異なるので胎児性胆汁酸として提唱した。本研究は、胎児-新生児期の胆汁酸組成ならびに体内動態について従来の結果を全面的に再検討し、胎児性胆汁酸を指標とする先天性肝胆道疾患の病態解析法を確立して、新生児医療の進展に寄与することを目的とし、下記の結果を得た。 1.胎児性胆汁酸および胆汁酸代謝異常成分の合成(藤間)先に発見された1beta-(R_1=OH)の他に2-(R_2=OH),6-(R_3=OH)、19-水酸化胆汁酸(R_4=OH)および未同定胆汁酸の量論的研究を進めるためコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸を原料として標品の合成を行なった。 2.GC-MSによる胎児性胆汁酸の微量分析法開発と体内動態の解析(藤間、木村)胎児性胆汁酸の体内動態および生成機序を明らかにするため、胆汁酸の高感度定量法を開発し、羊水、妊婦尿、新生児尿、血液および胆汁について胎児-新生児の発育に伴う胆汁酸組成の変動を検討した。 3.胎児性胆汁酸の生合成機構の酵素化学的検討(吉村)カニクイザル胎仔の肝ミクロゾーム、ミトコンドリア、ペルオキシゾームの各分画についてコール酸等の胆汁酸および生合成中間体の標品を基質として酵素反応を行い、反応成績体を上記分析法により解析し胎児性胆汁酸の生合成過程について検討した。
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