研究分担者 |
SATO Mitsuo Biophys.Div., Fac.Pharm.Sci., Teikyo University Prof. (70101714)
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研究概要 |
軸配位子が水素結合した低スピンヘム錯体,Fe(TPP)(OMe・・・LOMe)_2^-inCH_2Cl_2-MeOL(ただし、TPP=テトラフェニルポルフィン,L=H or D),をESR測定し、g主値に対する重水素同位体効果を初めて見出した(g_X=1.9134,g_Y=2.1654,g_Z=2.4949 for L=H and g_X=1.9146,g_Y=2.1643,g_Z=2.4917 for L=D).g主値の結晶場理論による解析結果は、d軌道のエネルギー分裂および励起Kramers二重項への遷移エネルギーはL=Dの方がL=Hの方より10〜30cm^<-1>だけ大きいことを示した.他方、水素結合O-L・・・Oの伸縮振動を考慮した量子力学的計算によれば、「励起電子状態における水素結合が基底電子状態より強い(弱い)場合には、遷移エネルギーはL=Dの方がL=Hの方より大(小)となる」ことが示された.これらの結果は、Fe(TPP)(OMe・・・LOMe)_2^-における水素結合は基底電子状態よりも励起電子状態の方が強いことを意味し、定性的には、低スピンヘムの電子構造からわかる通り、軸配位子MeO^-の酸素上の電子密度が励起状態において増加しているためとして理解される.一般に、基底および励起電子状態における水素結合に差違がみられる場合には、結晶場エネルギーや励起電子エネルギーに対する重水素同位体効果が期待され、それがg主値に対する同位体効果に反映されるとしてよい.したがって、g主値に対する同位体効果の測定は、水素結合の電子状態依存性を研究し得る一つ方法を提供することになり、同位体効果の測定とその解析自体に物理化学的意義があると考えられる.
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