研究概要 |
(1)ACEI系降圧薬カプトプリル(CP)について---CPの降圧降下を,正常ラット(NR)と高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて,数種の投与量レベルで検討した。これらの結果を,従来から当研究室で行っているモデル解析法を用いてPK/PD解析を行ったが,SHRにおいては,両者を定量的に関係付けることは出来なかった。この原因は,【.encircled1.】病態時のMAP,血漿中ACE活性は,約25時間周期の著しい日内変動があること,【.encircled2.】実際のMAPの日内変動幅は,血漿中ACE活性の日内変動から予測される値よりも遥かに大きいこと,【.encircled3.】組織中ACE活性を用いると,CPの降圧効果と体内動態とを定量的に結び付けられる可能性があることなどである。現在日内変動のモデル化を検討中である。 (2)サケカルシトニン(sCT)について---NRを使用して血漿中Ca濃度の日内変動を血漿中PTH,無機リン(Pi),内因性CTとともに測定した。その結果【.encircled1.】NRにおけるCa日内変動は,約25時間周期,午前2時頃が最低で日照とともに午後2時頃が最高値をとる顕著な日内リズムが存在すること,【.encircled2.】その変動幅は余り大きくないが,sCT投与時に影響していることがわかった。すでに血漿中Ca恒常系とsCTの効果,sCTの体内動態とを用いてPK/PD解析を完成しているので,現在日内変動のモデル化を検討中である。 (3)アルギニンバソプレッシン(AVP)について---AVP投与後血漿中AVPをRIAを用いて測定し,MAPとの関連性を検討しはじめている。本研究の目的は,生体恒常系を介して薬効が発現される薬物を取り上げ,生体恒常系の,特に日内変動リズムがこれらの薬効に及ぼす影響を検討し,次にこれらを積極的に組み込んだ新しい薬物投与計画を設定することにある。これを遂行するにはまず生体恒常系そのもののモデル化と日内変動の影響を検討する必要がある。これまでのところ上記のように,順調に研究が進展している。しかし【.encircled1.】当初考えていたよりも薬効に及ぼす日内変動因子の寄与は小さいこと,【.encircled2.】生体恒常系の日内変動をあらわすモデルは文献的には皆無に近く,これを如何に数学モデル化するかは大きな問題点であること,【.encircled3.】最終目的である新しい投与計画設定法の確立にはまだかなりの検討事項が残されている。
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