研究概要 |
1.中性子捕捉療法用非溶出性微小マイクロカプセル(MC):(1)ニコチン酸を薬物モデルとして1:1Ethylcellulose-Cholesterolまたは9:9:4 Poly(EA-MMA-HEMA)を150%量コーティングした場合,MCの平均粒子径は74-76μm,ニコチン酸の3時間溶出率は10-20%であり,水溶性薬物の微小MCによる溶出抑止は困難であった。 (2)Gd-DTPAのStearylamide(Gd-DTPA-SAm)及び膜剤に9:9:4 Poly(EA-MMA-HEMA)を用いて,平均粒子径52μm,薬物含量38.4%,60日間Gd溶出率0.23%のMCが調製でき,中性子捕捉療法用デポ製剤としての利用が可能になった。 2.塞栓療法用レシチン膜MC:(1)Lecithin-Cholesterol-Stearic acid-Polyvinylpyrrolidone(重量比5:5:2.5)について,各成分がMCの溶出特性・崩壊挙動・相状態に及ぼす効果を,熱分析,X線回折,等温偏光顕微鏡観察より検討し,相図を明らかにし,より広範な特性を持つ処方を見いだした。 (2)上記5:5:2.5膜剤の被覆量の異なる2種類の20%アドリアマイシン含有レシチン膜MCを微量調製し,家兎VX2腫瘍の支配動脈に注入したところ,顕著な抗腫瘍効果示した。 (3)Gd-DTPA-SAmを29.3%含有する上記レシチン膜MCを微量調製し,ラット肝動脈に注入し,誘導結合プラズマ発光分析法でGdの定量を行った。その結果2週間以上の長期にわたり肝臓内に投与量の41.6%のGdを滞留させることができ,肝臓癌の中性子捕捉療法への利用が可能になった。 3.温度感受性ラテックス膜MC:外層にN-isopropylacrylamideをグラフトしたコア(12:6:4 Poly(EA-MMA-HEMA))-シェル型複合構造ラテックスを用いて調製したMCの温度感受性応答を検討した。本膜剤はコアが軟化する37℃での保持時間に対応して非透過性のコア高分子のネットワークを形成し,これが温度感受性を低下させることが分かった。今後,構造の安定化を計る材料設計が必要と思われる。
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