研究概要 |
1.先に開発した短時間遅延・制御放出・体内消失性レシチン膜マイクロカプセルのレシチン-コレステロール-ステアリン酸-PVP混合膜系で,レシチンとして相転移温度が低い大豆レシチンを用い組成が5:5:2:5でコーティング量の異なる2種類のカプセル,およびレシチンとして相転移温度が高く血中での消失性に乏しい水素添加卵黄レシチンを用いたカプセルをらっとに肝動注した.各々のカプセルの消失特性に応じて,血中濃度は投与直後は低く,その後徐々に増加し極大ないしは平衡値に達するプロファイルを示した.これによりin vivoにおいてもin vitroでの特性が発現されていることを確認した. 2.ガドリニウム疎水性誘導体として,Gd-DTPAのステアリルアルコールエステル(Gd-DTPA-SA)の量産を可能にした.先に合成したステアリルアミド(Gd-DTPA-SAm)と合わせて,生体内で分解・非分解性の2種類の疎水誘導体が確保されたことになる. 3.今回合成したGd-DTPA-SAを用いた場合も,前年度報告したGd-DTPA-SAmの場合と同様のマイクロカプセルが調整でき,投与後1時間までの血中濃度プロファイルも同様であった. 4.レシチン膜マイクロカプセル肝動注時の肝組織障害性を調べるため,Gd-DTPA-SAm含有カプセルをラットに動注し,生化学的,組織学的検討を行った.3日後では組織障害が認められるものの,7日後では生化学的指標は正常値に戻り,組織学的には障害部に繊維芽細胞が認められ,復元・正常化が進行していることが確認された.この結果は,適切な製剤特性と投与法を選択すれば,正常組織の致命的な障害を回避した有効な肝癌治療が可能であることを示唆した.
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