脳を構成する神経系のネットワークはグリア細胞によって取り囲まれている。アストロサイトはグリア細胞の一種であり、神経伝達物質をはじめとする各種受容体が発現している。本研究では、グリア細胞の機能を明らかにすることを目的とし、細胞の分化に伴って引き起こされるグリア細胞の機能変化について検討した。ヒトアストロサイトーマ細胞(1321N1)、ウサギ培養アストロサイトおよびマウス培養アストロサイトについて、通常のウシ胎児血清添加による増殖期の培養時における細胞機能、血清濃度を0.5%にして増殖を抑えた場合の細胞機能、更にジブチリルサイクリックAMPを添加し分化を促進した場合の細胞機能について検討した。細胞を増殖期から分化にむかわしめることにより、細胞の形態は変化し細胞周辺に細長い偽足のような構造物が多く観察されるようになった。トロンボキサンA2受容体刺激によるホスホリパーゼCの活性化は低濃度血清培養下、およびジブチリルサイクリックAMP処理により、減少することが観察された。さらに、G蛋白のGq/11およびGoをウェスタンブロッティングで検出したが、Gq/11は分化によってあまり変化せず、Goはもともと低い量のみ発現していた。一方、ホスホリパーゼC-β1についてもその発現レベルの変化を観察したが、分化によって大きな変化は認められなかった。これらの分化によって引き起こされるいくつかの細胞機能の変化は、アストロサイトがグリオーシスの状態にある場合と静止期にある場合で機能が異なることを意味しており、今後これらの事象の詳細な解析を行っていく予定である。
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