先ずカニクイザル脳を用い、肝P450に対する抗体を用いP450蛋白の発現を確認し、またいくつかの薬物代謝活性を認めた。次いで、mRNAを抽出し、cDNAライブラリィを作成しイムノスクリーニングを行ったが、P450の全一次構造をコードするフラグメントを得ることが出来なかった。用いたいくつかのP450に対する抗体はラットあるいはヒトP450を抗原としたものであったことから、カニクイザル肝からP450の精製を試み最終的に4種のP450を単離することに成功した。同時にドグエラヒヒよりカニクイザルP450CMLc(P450 3A enzyme)と極めて類似したP450(P450 BLa)の単離にも成功した。これらのP450に対する抗体を用いて脳、肝よりP450をコードする遺伝子をスクリーニングした結果、肝よりP450 CMLa(P450 2B enzyme)の遺伝子を解明することに成功した。また、ノーザンブロット分析の結果から、アカゲザル脳においてもP450 CMLaと類似したP450が存在することが明らかとなった。この結果ならびにイムノブロット分析の結果から、薬物誘導型P450のサル脳における存在が明らかとなった。現在もPCRを用いて脳P450の構造について肝P450と平行して研究を進めており、これまで明らかとなったサル肝P450ばかりでなく脳P450についてもその構造が解明されるものと思われる。その機能については、肝P450のそれと比較することにより新たに脳におけるP450の役割が明らかになる可能性がある。
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