研究概要 |
1.Na^+輸送NADH-キノン・リダクターゼを精製し、各サブユニットのN末アミノ酸配列を決定した。次に各サブユニットをV8プロテアーゼで限定消化し、得られたポリペプチドのN末分析を行った。これらの情報に基づき、各サブユニットに対応するセンス、アンチセンス・プライマーとなるオリゴヌクレオチドを合成した。 2.Vibrio alginolyticusのDNAを分離・精製し、これを鋳型とし、各サブユニットに対応するセンス、アンチセンス・プライマーを用い、PCR法によって対応する遺伝子を増幅した。この方法によって各α,β,γサブユニットの遺伝子に対応する307bp(probe A),611bp(probe B),517bp(probe C)を得ることができた。 3.各プローブの塩基配列を決定した。これによって、αサブユニットの約20%、βおよびγサブユニットの約50%の塩基配列を決定することができた。分析された塩基配列から推定されるアミノ酸配列の特徴はNADHと反応するβサブユニットには膜貫通領域が認められず、比較的水溶性の膜表在蛋白質である事を示唆した。また、γサブユニットについては、N末部分に膜貫通領域が存在していた。なお、合成したプライマーを組み合わせて行ったPCR産物の解析から、各サブユニットに対応する遺伝子はα-γ-βの順に配列していると考えられる。現在、さらに長いPCR産物が得られているので、その塩基配列を進めている。 4.ここで調製したprobeA,B,Cはそれぞれのサブユニットに対応した遺伝子の検索に用いられるので、ラベルした後、各遺伝子のクローニングを進めている。一方、大腸菌の発現系を用いて合成されるサブユニット解析のために、本酵素の最大の特色である一価カチオンによる修飾様式および阻害剤の効果について、キネテックスの手法を用いて詳細に検討した(研究発表論文)。これらの情報は今後の研究を進める上できわめて重要な役割を果たす。
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