1.大腸菌のポリアミン輸送系は3種存在する。そのうちのスペルミジン優先取り込み系は基質結合蛋白質(potD)、膜貫通蛋白質(potBおよびC)、およびATP結合部位を有する膜表在性蛋白質(potA)の4種より構成されている。このpotA蛋白質の機能をX線結晶解析およびsite-directed mutagenesisにより変異蛋白質を作製し解析した。その結果、N末端側にATP結合部位とATPase活性中心が存在し、C末端則は膜貫通蛋白質との相互作用に関与していることが明らかとなった。同様な手法を用いてpotD蛋白質のスペルミジン結合部位の同定を試みた。その結果、Glu36とGlu171が一級アミンとの相互作用に、Asp257が二級アミンとの相互作用に関与していることが明らかとなった。 2.ポリアミン輸送系のうちの第2は、プトレスシンの排出に関与するpotE蛋白質である。この蛋白質は分子量46kDaで、12ヶ所の膜貫通部位を有する膜貫通蛋白質である。プトレスシンの排出はプトレスシン・オルニチンアンチポーター活性に基づいており、エネルギーを必要としなかった。potE蛋白質は排出活性に加え、プロトン駆動力をエネルギー源としてプトレスシンの取り込み活性も有することが明らかとなった。この蛋白質の活性中心を、この蛋白質に存在する16個の酸性アミノ酸を中性アミノ酸に変換することにより解析した。その結果、Glu207が活性中心であることが明らかとなった。そのほかにGlu77、Glu113、Glu409が活性に関与していることが示唆された。またこの遺伝子の発現はRNaseIIIにより活性化された。 3.細胞内ポリアミン量は生合成と輸送の両者に依存している。動物細胞の場合は生合成の律速酵素であるオルニチン脱炭酸酵素の分解を促進するアンチザイムという蛋白質がポリアミン輸送も負に調節していることが明らかとなった。
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