研究概要 |
我々は、主に癌化肥満細胞からプロスタグランジン(PG)E受容体の3つのサブタイプEP1,EP2,及びEP3、更にC末端鎖のみ異なるEP3の複数のイソフォームのcDNAをクローニングした。それぞれの受容体をCHO細胞に発現させ、それらの機能について解析した。 EP1は、Gi、GsやGq以外のG蛋白質と会合し、ホスホリパーゼC系とは全く異なる機構で細胞膜上にあるCa2_+透過性カチオンチャンネルを活性化し、Ca2_+流入を引き起こした。その結果、EP1はCキナーゼを活性化し、腎臓ではNaイオンの再吸収を阻害する。一方、EP1の第3細胞内ループにはCキナーゼによる燐酸化部位があり、Cキナーゼにより燐酸化されることにより、EP1とG蛋白質との会合が阻害され、EP1によるCa2_+流入が制御された。この様に、EP1はCキナーゼを介してその情報を伝えるが、一方でそれにより負の制御を行っている。 EP3は、Giを介してアデニル酸シクラーゼを抑制するが、一方で、Ca2_+流入を引き起こした。これは、Giの活性化により遊離したβγサブユニットがホスホリパーゼC-βを活性化し生じたIP3が細胞膜上のIP3感受性のCa2_+透過性カチオンチャンネルを活性化するためであった。EP3は、Giを介してCa2_+流入で子宮収縮を引き起こすが、この作用は上に述べた機構によるものと考えられる。 これら3つのサブタイプの腎臓における発現部位をインジツハイブリダイゼーション法により調べた結果、EP1は乳頭部に、EP2はメサンギウム細胞に、EP3はヘンレループと集合管に高い発現が見られた。この様に、各サブタイプは腎臓の異なる部位において、腎臓の違う機能を調節していることが示唆された。これらのことから、PGE2の複雑で多彩な作用は、機能的に異なる受容体サブタイプ又はイソフォームが異なる細胞に発現し作用を発揮しているためと考えられる。
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