シナプス小胞における神経伝達物質の能動輸送体のうち、興奮性アミノ酸であるグルタミン酸輸送系の研究は、基礎のみならず臨床あるいは応用の立場からも極めて興味深い輸送体であるにもかかわらずその蛋白化学的性質はもとより、その性質の詳細はほとんどなにもわかっていない。そこで本研究においては(1)グルタミン酸輸送体の精製、(2)アンタゴニストの開発及び(3)輸送のためのエネルギーを供給するV-ATPaseの構造的な解析を目的とした。 本研究を終えるにあたり、いずれの計画ともほぼ予定通りの成果をあげたと考えている。すなわち、(1)においてはグルタミン酸輸送系をシナプス小胞膜から可溶化しリポソームへ組み込み、人工的な駆動力を加えることにより輸送活性を再構成することに成功した。また、この実験系を用いて部分精製標品をえることができた。現在、鋭意精製を進行中である。 (2)に関してはジベンジルグルタミン酸が強い拮抗阻害剤であることを見いだした。又(3)については、オメプラゾールやキナクリンマスタードの結合サブユニットを決定し、特に薬剤とV-ATPaseとの相互作用に関する知見を得た。また、クロスリンクの手法を用いサブユニットの相互作用に関する知見を得た。
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