研究概要 |
本年度はTHCA合成酵素を精製するため,酵素の抽出条件及び活性を検出するためのための至適条件等を検討した.アサから粗酵素を抽出し,CBDAを基質として,酵素活性の検出を試みたが,各種抽出及びアッセイ条件を用いたにもかかわらず,CBDAからTHCAの変換反応を触媒する酵素活性を検出することができなかった.本実験結果からCBDA以外のカンナビノイドから生合成される可能性も否定できないことが示唆された. そこでCBDA以外のカンナビノイドを基質としてアッセイ条件の検討を行った.アサに含まれる多くのカンナビノイドはCBGAを経由して生合成されることから,本化合物を基質として用いた.この結果,アサの粗酵素エキス中にCBGAからTHCAに変換する酵素活性を検出することができた.酵素活性が検出できたことにより,更に抽出条件及びアッセイ条件を再検討したところ,本酵素は可溶性蛋白質で,約6.5付近に至適pHを有することが判明した.本アッセイ条件下でCBDAを基質として用いてもTHCAの生成は認められないことから,CBGAから直接THCAを生成すると結論した. THCAはアサのみに含まれる特異な幻覚成分であり,薬理学的研究や化学的研究が詳細に行われているにもかかわらず,生合成酵素に関する研究は全くなされてない.また,THCAの生合成に関しては,CBGAからCBDAを経由する生合成経路が推定されているが,今回の研究結果から,THCAの生合成経路として,CBGAから直接生合成される経路が考えられ,極めて興味深い知見が得られた.現在,各種クロマトグラフィーを用いて本酵素の精製を試みており,平成6年度では,酵素の精製を完了させた後,酵素の性質及び部分一次構造を決定する計画である。
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