研究概要 |
本年度は、アサからTHCA合成酵素の精製を試みた。まず最初に抽出条件を検討した。抽出溶媒としてphosphate buffer,Tris-HCI 及び1M CaCl_2を用いてアサから粗酵素エキスを調製し、それぞれについて酵素活性を測定した結果、1M CaCl_2溶液が最も高い酵素活性を与えた。また、抽出部位に関しては、頂芽が最も高活性を示すことが判明した。以上の検討から、アサの頂芽から1M CaCl_2を用いて粗酵素エキスを調製し、各種クロマトを用いてTHCA合成酵素の精製を試みた。基質としてCBGAを用い、酵素反応によって生成するTHCAをHPLCで検出することにより、カラムからの溶出液中の酵素活性を測定した。DE-52,phenyl Sepharose CL-4B及びhydroxylapatiteの3種のクロマトグラフィーに付すことによって電気泳動上単一のバンドを示すまでに精製した。THCAの生合成に関与する酵素を精製したのは本研究が最初である。SDS-PAGE、isoelectric focusing 及びゲルろ過からTHCA合成酵素は分子量55kDa、等電点6.3の単量体酵素であることが判明した。THCA合成酵素はCBGA及びCBNRAを立体選択的にTHCAに変換することが明らかとなった。さらに本酵素はCBGAに対し、CBNRAに比べ高い酵素活性および親和性を示した。以上の結果から、THCAはおもにCBGAから生合成されるものと結論した。従来、THCAはCBDAから生合成されるものと推定されていたが、本反応を触媒する酵素活性を検出することはできなかった。本研究は初めてTHCAの生合成経路を直接証明しており、きわめて重要な研究と考えられる。
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