平成6年度は平成5年度に引き続き、自己免疫疾患モデルを用い、治療薬を薬理学的に検討した。その一部の実験ではMRL/lpr Yaaマウスおよびtype II collagenによる関節炎マウスを用いて関節炎の発症機序を薬理学的に検討し、以下のような成績を得た。すなわち、MRL/lpr YaaマウスではYaa遺伝子をもたないMRL/lprマウスに比べて腎炎および関節炎の発症が促進され、疾患の程度も強かった。この際のMRL/lpr Yaaマウスの腎炎症状はシクロフォスファミドおよびプレドニゾロンによって明らかに抑制されたが、シクロスポリンおよびミゾリビンでは影響されなかった。また、この時の免疫異常の一つである脾臓細胞中のThy1.2^+、B220^+細胞の増加はシクロフォスファミドにより明らかに抑制された。さらに、PHAによるIL-2、IFN-γ、IL-5、IL-6産生は対照群では明らかに低下したが、シクロフォスファミドにより回復がみられた。これらのことは発症に遺伝的要素が強く関与しても薬物治療が可能であることを示している。さらに、この時、シクロフォスファミドは自己抗体産生も強く抑制された。したがって、シクロフォスファミドは単に免疫系の異常を改善するのみならず、炎症系の異常も改善し、先天的な遺伝子異常による疾患発症も改善することを示唆する。また、type II collagenによる関節炎モデルでは発症に関与するT細胞の性質はTh1様であり、この細胞を特異的に抑制するSM-8849およびメゾポルフィリンの免疫薬理学的手段としての有用性、および治療薬としての有用性を明らかにした。これらの成績は自己免疫疾患の今後の薬物療法に大きな示唆を与え、その治療の可能性を示唆した点で意義を有する。
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