ヒト成熟肥満細胞のin vitroでの分裂増殖系を確立することを目標に種々の検討を行った。 1.Percoll比重遠心法を用いた簡便なラット腹腔肥満細胞の分離精製法を確立した。肥満細胞からのIgE依存性histamine遊離は精製によって著しく低下するが、分離した他の細胞を再構成すると再構成した細胞の数および再構成後の時間に依存して回復する。非肥満細胞および非肥満細胞を純化肥満細胞と混和したものの上清は純化肥満細胞からのhistamine遊離を回復させない。肥満細胞と非肥満細胞との直接的な相互作用が重要な役割を演ずると考えられるが、VLA-4などの接着分子の関与はないように思われる。 2.stem cell factor(SCF)はラット腹腔肥満細胞からのhistamine遊離を惹起しないが、IgE依存性のhistamine遊離を増強する。抗SCF抗体はSCFによるhistamine遊離の増強を抑制するが、非肥満細胞による純化肥満細胞からのhistamine遊離の回復には影響を及ぼさない。 3.免疫ラットの腹腔内で抗原抗体反応を惹起すると3週間後をピークとする肥満細胞の増多が観察される。in vivoでの肥満細胞増多には感作リンパ球からのfactorが重要な役割を演じると考えられる。 4.免疫、感作したラット腹腔細胞を同一ラット脾細胞とともに4週間Matrigel上で抗原刺激を加えながら培養した。培養開始3および4週目に肥満細胞様の形態を有する細胞が多数観察された。 5.ヒト肺肥満細胞のcollagenaseおよびhyaluronidase処理による分離法を検討した。細切したヒト肺組織からえられた単離細胞浮遊液には最大で5%程度の肥満細胞が含まれていた。肥満細胞の単離法がほぼ確立できたので、ヒト肺肥満細胞からのIgE依存性のhistamine遊離およびin vitroでの培養についての検討を計画している。
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