本研究は現在知見がきわめて少ない必須微量金属の脳内移行及び神経変性との関係を検討したものである。 ^<65>Znと^<54>Mnをラットら静注し脳内各部位への分布をバイオイメージングアナライザーを用いて検討したところ、これらのトレーサーが脳室内の脈絡叢を介してゆっくりと神経組織に集積することを見いだした(平成5年度報告)。そこで亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)等が脳脊髄液を介して脳内に取り込まれる可能性をトレーサーの脳室内投与によりさらに検討した。その結果、^<65>Zn及び^<54>Mnはそれぞれ海馬、視床下部等及び脳幹部に高く集積し、脳脊髄液を介して脳内各部位へ取り込まれることが強く示唆された。すなわち、これらの金属は脳室内脈絡叢を介してCSFへ移行し、徐々に脳内各部へ移行しニューロンやグリアに取り込まれると考えられる。一方、大脳皮質及び中脳、橋、延髄等へのZnの取り込みには血液脳脊髄液関門に加えて、血液脳関門の関与も大きいと考えられる。 ラット脳内の黒質に6-OHDAを投与し黒質-線条体系ドパミンニューロンを変性させた場合に、^<65>Znは黒質に高く分布した(平成5年度報告)。そこで、線条体に6-OHDAを投与し同様の実験を行ったところ、^<65>Znは線条体に高く分布した。さらに、投与部位以外にも^<65>Znは大脳皮質の嗅覚領域である梨状皮質、鼻周囲皮質に高く分布する傾向にあり、黒質-線条体系ドパミンニューロンの変性とZnニューロンの活動との関連性が示唆される。
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