本研究は脳機能の核医学的画像化に対して全く試みられていなかった必須微量金属のトレーサーを用いて、その機能解析を目指したものである。すなわち、脳内で亜鉛(Zn)は神経調節因子として機能し、記憶にも関与していると考えられている。Znが脳内の恒常性維持に働き、神経機能に関与するためには脳内に移行する必要があると考えられる。本研究では^<65>Znを用いて、正常ラットならびに黒質-線条体系のドパミンニューロンを変性させたラットにおいて、Znの脳内動態を検討した。また、神経系における機能がほとんど明らかにされていないマンガンについても^<54>Mnを用いて脳内動態を検討した。 現在知見がきわめて少ないZnとMnの脳内移行を感度、分解能、定量性に優れたバイオイメージングアナライザーを用いるオートラジオグラフィーにより調べた。その結果、ZnとMnの脳内微小領域における集積性を明かにするとともに、これらの金属の脳内移行に血液脳脊髄液関門が大きく関与していることをみいだした。 ラット脳内の黒質あるいは線条体に6-OHDAを投与し黒質-線条体系ドパミンニューロンを変性させた場合に、^<65>Znは投与部位の黒質及び線条体に高く分布した。さらに、投与部位以外にも^<65>Znは大脳皮質の嗅覚領域である梨状皮質、鼻周囲皮質に高く分布する傾向にあり、黒質-線条体系ドパミンニューロンの変性とZnニューロンの活動との関連性が示唆される。すなわち、Znの神経伝達への関与をインビボの実験系で示唆した。
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