研究概要 |
糖尿病における白血球の機能低下の機構を知るため、ストレプトゾドシンによって誘発した糖尿病ラットより好中球を調整し、種々なメディエーターの前駆体となるアラキドン酸の代謝の変動について検討した。その結果以下の点について明らかとなった。 1)糖尿病誘発ラットの各臓器、白血球、血小板マクロファージ、いずれの細胞において、リン脂質中のアラキドン酸の減少がみられた。 2)A23187で活性化した好中球のリン脂質から放出される遊離アラキドン酸量を測定したところ、糖尿病ラット好中球では遊離アラキドン酸は正常に比較して著しく少なく、正常の約50%であった。 3)アラキドン酸より生成するリボキシゲナーゼ産物であるロイコトリエンB4、また5-HETEの産生も糖尿病では有意に減少していた。 4)A23187による好中球の凝集を調べたところ、正常に比較して糖尿病ラット好中球では明らかに低下していた。好中球の凝集はアラキドン酸,LSB4でも惹起された。アラキドン酸による白血球の凝集能は正常、糖尿病で違いは見られなかったことから、凝集能の低下は遊離アラキドン酸生成の減少による事が明らかとなった。 これらの結果より、糖尿病ラット好中球ではアラキドン酸が減少しており、このアラキドン酸の減少がLTB4などのメディエーター産生の低下させ、さらに凝集などの白血球の機能低下を引き起こすことが明らかとなった。
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