ペルオキシソーム膜形成ならびに分解の分子機構を明かにすることを目的として、【.encircled1.】培養細胞系、in vitroタンパク質輸送系を駆使し、ペルオキシソーム膜タンパク質の生合成からペルオキシソーム膜への組込み過程を解析すること、【.encircled2.】ペルオキシソーム膜タンパク質分解に係わる酵素を検索することを行った。その結果、以下に示す新しい知見を得た。 1.ラット肝癌細胞(H4-II-E)を[^<35>S]methionineでパルス-チェイス後細胞分画し、抗69kDaぺルオキシソーム膜抗体を用いた免疫沈降により、69kDaタンパク質が生合成後、短時間細胞質に存在し、その後ぺルオキシソーム膜に挿入されることを明らかにした。また細胞質中のATPを枯渇させると移行過程の本タンパク質が凝集すること、膜への組込みにもATPなどのエネルギーが必要であることを見いだした。 2.69kDaタンパク質cDNAをin vitroでtranscription/translationし、ラット肝より精製したぺルオキシソームとincubationすることにより、69KDaタンパク質が温度、incubation時間に依存し、ぺルオキシソーム膜に特異的に組込まれる実験系を構築することができた。その結果、現在までに69kDaタンパク質のぺルオキシソーム膜への組込みには細胞質因子が必須であること、本タンパク質のぺルオキシソーム移行シグナルは膜貫通領域を含むN末端1/4内に存在することを明らかにした。 3.ラット肝ぺルオキシソームにmetalloendoproteaseが存在することを見いだした。また本酵素は酸化タンパク質に大して高い特異性を持つことから、ぺルオキシソームで酸化的修飾を受けたタンパク質の分解に関与している可能性を指摘した。最近、ぺルオキシソーム膜、マトリックス分画に酸化タンパク質が存在することを確認したので、これら酸化タンパク質が本prpteaseによりすみやかに分解されることを確認したい。 以上、ぺルオキシソーム形成機構および分解系の一端が明らかにされた。今後、さらに詳細な解析を進めたい。
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