1.エンドセリン変換酵素(ECE)活性を有する膜結合型金属プロテアーゼの同定 ラットの種々組織から調整した膜分画のECE活性を測定したところ、腎臓は他の組織に比べてかなり高い比活性値を示した。そこで、本研究では腎臓のECEの諸性質について調べた。膜可溶化分画をゲル濾過カラムに添加した場合、ECE活性は分子量約450kDa(HMW分画)と約150kDa(LMW分画)の位置に認められた。HMW分画の金属プロテアーゼはアクチノニンにより阻害されたが、ホスホラミドン及びケラトルファンにより影響を受けなかった。一方、LMW分画の金属プロテアーゼはアクチノニン、ホスホラミドン及びケラトルファンにより阻害された。また、両分画の金属プロテアーゼは血管内皮細胞や肺で同定されたECEのそれとは異なっていた。更に、HMW分画の金属プロテアーゼの諸性質はラット腎臓に存在するエンドペプチダーゼ-2のそれに極めて類似していることから、エンドペプチダーゼ-2を精製してECE活性の有無について検討を加えた。その結果、エンドペプチダーゼ-2は変換率は低いもののビッグエンドセリン-1(Big ET-1)からエンドセリン-1(ET-1)を生成することが明らかとなった。 2.Big ET-1に対するプロテアソームの作用 ET-1のC末端側3個のペプチドを含む蛍光合成基質(suc-lle-lle-Trp-MCA)がプロテアソームにより加水分解されることから、当該の年度には精製したプロテアソームがbig ET-1に作用して実際にET-1を生成するかどうか調べた。しかし期待に反して、プロテアソームはbig ET-1及びET-1分子内のいずれのペプチド結合も切断しなかった。
|